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2011年9月号vol.410

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毎日新聞社より発表された『読書世論調査 2011年版』によると、2010年の5月の1か月間、1冊も本を読まなかった「不読者」は、小学生6.2%、中学生12.7%、高校生44.3%にもなるそうです。
本を読むことは、学力アップにつながります。それだけでなく、困難を乗り越える力、相手を思いやる心などを身に付けることもできます。今回は、そんな読書の魅力を、神戸親和女子大学の笹倉剛先生に伺いました。子どもと本をつなぐ活動をされている先生から、読書好きになれるコツを教えていただきましょう!

子どもは皆、本が好きなんです

読書は楽しい!

実は、恥ずかしい話ですが、私は本をまったく読まない子どもでした(笑)。高校に入学して入った陸上部で、先輩にすすめられて初めて読んだ本が『三国志』だったんです。全3巻の厚い本だったのですが、大変面白くて、寝るのも忘れて1日半で読み終えてしまいました。読書の世界がこんなに魅力的で楽しいものであると、ずっと知らなかったことを後悔しましたね。それからは、社会科の先生が紹介してくれる本などを積極的に読むようになりました。
私は、教師として、中学校に15年、高校に2年の計17年間学校現場にいました。高校生の時の体験から、生徒たちにも本の魅力を知ってほしい、本を好きになってほしいと思っていましたので、教師になってすぐ、教室に「笹倉文庫」を設けて、生徒に読んでもらいたいと思った本を並べたのです。本は、ただ並べるだけでなく、作家別、ジャンル別に分け、本の紹介なども行っていました。生徒たちは本をすぐに好きになってくれました。友だち同士で「あの本面白かったね」と話し合っているのを聞くと、大変嬉しかったですね。
本の面白さを紹介してくれる人がいれば、いつでも誰でも本の世界に夢中になれると思います。特に、子どもは皆、本が大好きになれるはずです。足りないのは、子どもの心を動かすような「良質な本」との出会いです。最初から本が嫌いな子どもなんて、一人もいないと思いますよ。

『泣いた赤おに』
(偕成社)
著:浜田廣介/絵:梶山俊夫

『だいくとおにろく』
(福音館書店)
著:松居直/絵:赤羽末吉
人と仲良くなりたい赤鬼と、そんな赤鬼のために自ら犠牲になる青鬼の、心あたたまる話。 川に橋をかけようとする大工と、その川に住む鬼とのやり取りが、美しい日本語でつづられている。

「ブックトーク」を通じて読書の魅力を発見

「良質な本」と出会うには、ちょっとしたきっかけがあればいいと思います。
私が行っている活動の一つに「ブックトーク」というものがあります。相手が小中学生の場合なら、30分ほどで7〜8冊の本を、1冊ずつ丁寧に紹介するのです。小学生に鬼の本を紹介するとすれば、まず初めに、子どもたちに「鬼ってどんなイメージ?」と尋ねます。子どもたちから「怖い」「嫌い」などの反応があれば、「優しい鬼もいるんだよ」と言って、『泣いた赤おに』を紹介します。次に「では、優しい鬼ばかりかな?」と言って、『だいくとおにろく』という昔話を紹介します。このように、鬼という一つのテーマに沿って、どんどん本を紹介していくと、子どもたちは鬼たちが見せる様々な顔に引き込まれていきます。紹介する本も、物語だけではなく、詩や写真集、地域の祭などに登場する鬼を紹介した本、科学的に鬼を分析した本など、なるべく幅広いジャンルの本を並べて、子どもたちの好奇心を刺激するようにしています。 私は「ブックトーク」の活動を通じて、「一つの事柄に対して、様々なジャンルの本があり、幅広い見方ができる」面白さを伝えたいと思っています。このことが一度わかれば、子どもたちは積極的に本を手に取るようになると思うのです。
「ブックトーク」には、他にも、子どもと1対1で語り合うスタイルもあります。
たとえば、図書館の本棚の前で、『魔女の宅急便』に興味を示した子どもがいるとします。まずはその子に、この本の面白さを伝えますよね。そして次に、「魔女について知りたければ、こんな本もあるよ」と言って、料理のことや薬草のことが載っている『魔女図鑑』を紹介します。
こうしたやり取りなら、誰でも気軽にできると思います。ぜひ図書館に足を運んで、保護者の方や、図書館の司書の方とコミュニケーションを取りながら、すばらしい1冊に出会ってほしいですね。
本屋さんにも本は並んでいますが、図書館には、本屋さんでは手に入らない皆さん向けの「良質な本」がたくさんありますよ。

『魔女の宅急便』
(福音館書店)
著:角野栄子/絵:林明子

『魔女図鑑
?魔女になるための11のレッスン』
(金の星社)
著:マルカム・バード/訳:岡部史
主人公のキキが親元を離れ、相棒の黒猫ジジとともに、魔女として成長する姿を描く。 オシャレのコツやお菓子づくりなど、魔女の知恵がわかる本。これを読めば、魔女の仲間入りができる?

読書の楽しさは共有できる

面白かった本、感動した本を、周りの人にすすめてみるのもいいですよ。家族や友だちと同じ本を読んで、どんなところが面白かったか、感動したかなどを話し合ってみるのはどうでしょう。とても楽しいと思いますよ。私が今、大学で実践している読書会でも、学生同士で本をすすめ合っているのですが、とても盛り上がっています。
友だちにすすめられた本は、魅力的に感じるものです。好きな本を教え合って、読書の楽しさを共有してみてください。
また、子どもの時の読書体験が、大人になっても影響するということもよくあります。そう考えると、読書はまさに宝物ですね。そこで、「読書記録」をつけることもおすすめしたいと思います。「読書記録」は、よく学校から宿題として出される読書感想文とは違います。読後の新鮮な記憶を簡単にメモしておくものだと思ってください。本のタイトル、作者、キーワードとなる言葉、印象に残った場面などを記録しておくだけでもいいですよ。後日、その本を読んだ自分がどんなことを感じたのか、明確に思い出すことができると思います。

学力と心を育むために
まずは「良質な本」と出合いましょう

本の世界は現実とつながっている

本を読むことは、学力アップにもつながります。文章をたくさん読めば、文章力が養われるだけでなく、話の組み立て方が身に付き、論理的な思考ができるようになります。物事を順序立てて考えることができるようになれば、算数や数学の文章題、理科の実験の考察 、英語の長文読解など、国語以外の様々な教科での学力アップにもつながると思います。そして何より、読書は皆さんの「心」を豊かに育んでくれるということを、知ってほしいのです。事実に基づいて書かれたノンフィクション作品に限らず、本の世界は、私たちの日常とつながっています。本の中で、登場人物たちは、数々の試練を経験するでしょう。
彼らがその試練にどう立ち向かい、どう乗り越えていくのかということは、私たちが実際に悩んだり、つらい思いをしたりした時、それらを乗り越えるためのヒントになるはずです。また、絵本や物語から、幸せな思いをたくさんもらった経験がある人は、他人に優しくできる心を持っていることでしょう。読書を楽しむうちに、困難に打ち勝つ力、相手のことを考える心が自然と身に付きます。

「良質な本」に出会うことのすばらしさを知ってほしい

読書が、学力アップや、たくましい心、相手を思いやる心を育てるとお話しました。しかし、「本なら何を読んでもいい」というわけではありません。こうした力を養うためには「良質な本」との出会いが必要です。
「良質な本」とは、売れている本や、話題になっている本とは、少し違います。長い間多くの人に愛され続けている本、確かなテーマや世界観がある本など、“心動かされる体験”を与えてくれる本が「良質な本」だと言えるでしょう。
今の子どもたちは、テレビや漫画、ゲームなど、ビジュアル的なものに触れる機会が多く、表面的に物事を考えてしまいがちです。そうではなくて、物事の奥深い部分を見ようとしたり、考えようとしたりする感性を、若いうちから養っていってほしいと思います。そのためには、感動・感激の体験をする必要がありますが、日常生活の中では、なかなかできないことですね。ですが、「良質な本」を通してなら、これらの体験を得ることがとても簡単なのです。偉人の伝記、宇宙飛行士や探検家の体験記などは、直接その人たちに会って話を聞くことが難しくても、本を通してその人たちのことを深く知ることができますよね。
「良質な本」は、もしかすると皆さんには、漫画やゲームより難しく複雑に感じられるかもしれません。しかしそれは、言いかえれば奥深いということなのです。たとえば『ゲド戦記』は、最初の100ページはとても読みづらくて、何度も挫折しそうになります。ですが、そこを我慢すれば、壮大で緻密な世界観と、ゲドが体験する様々な出来事に心が躍り、一気に読んでしまいたくなります。ずっと側に置いておきたい、家族や友だちに紹介したいと思えるような作品です。皆さんにも、ぜひ、このような作品と出会ってほしいと思います。
最後に、保護者の方へお願いです。一人の大人が、子どもに教えられることは、限られていると思います。ですが、本の世界を味方につければ、実に壮大な世界を知ることができますね。私も、教員生活では、本にすごく助けられました。そして何よりたくさんの読書体験は、お子さんの「未来への可能性」を育ててくれるはずです。これを機会に、本との出会いについて、お子さんと一緒に考えていただけると嬉しく思います。

『がんばれヘンリーくん』
  (学習研究社)
  著:ベバリイ=クリアリー
  絵:ルイス=ダーリング
  訳:松岡享子

『大どろぼうホッツェンプロッツ』
  (偕成社)
  著:オトフリート=プロイスラー
  絵:トリップ
  訳:中村浩三
「ゆかいなヘンリーくん」シリーズ第1巻。ヘンリーは、ある日、あばら骨が出ている一匹のやせた犬と出会う。“アバラー”と名づけた犬を家に連れ帰るために、バスに乗るのだが……。「シリーズものを読む楽しさを味わってください(笹倉先生)」。 大どろぼうホッツェンプロッツに、少年カスパールのおばあさんの、大切なコーヒーひきがぬすまれた!2人の少年と、大どろぼうとの対決から目が離せません。「登場人物と一緒に、わくわくしてくださいね(笹倉先生)」。シリーズは全部で3冊あります。

『精霊の守り人』
  (新潮文庫)
  著:上橋菜穂子

『二十一世紀に生きる君たちへ』
  (世界文化社)
  著:司馬遼太郎
女用心棒のバルサが、精霊の卵を宿した皇子チャグムを守るために戦い続けるファンタジー。「文化人類学者である作者が描く世界は、緻密で読み応えがあります(笹倉先生)」。アニメを観たという人も、ぜひ原作を読んでみてください! 国民的歴史小説家の司馬遼太郎が、未来を生きる子どもたちへ向けて書いた文章。「小学校の教科書にも収録された名文ですが、すべてを通して読んでください(笹倉先生)」。併載されている『洪庵のたいまつ』も教科書に収録された心に染みる名文です。

『影との戦いーゲド戦記T』
(岩波書店)
著:アーシュラ・K.ル・グウィン/
絵:ルース・ロビンス
/訳:清水真砂子
 
「アースシー」と呼ばれる世界を舞台に、並はずれた魔力を持つ男ゲドの、波瀾万丈の人生が描かれている  

読書は皆さんの宝物になります

読書がもっと楽しくなる!

皆さんが本の中で出会う、すてきな人物、驚き、感動は、きっと後々まで大事な「宝物」になります。本を読むだけでも、その感動的な体験はきっと心に残るでしょう。ですが、もうひと工夫すれば、読書はもっと楽しくなります。
笹倉先生もおっしゃっていたように、家族や友だちに、面白かった本、感動した本などをすすめてみるのもその一つ。同じ本を読んで、よかったところ、初めて知ったこと、感動したところなどを話し合ってみましょう。相手が、自分と同じシーンで感動していたり、自分とは違うところに驚いていたりといったことがわかれば、本の世界がより楽しく、奥深いものになるでしょう。
本の感想をうまくまとめて話すことが苦手な人は、気になったことを一つずつカードに書いていき、それをどの順序で相手に伝えるといいかを考えながら、カードを並びかえて話の筋道を組み立ててみましょう。これを繰り返すことで、話の組み立て方だけではなく、読書感想文などの文章の組み立て方、論理的な思考力を養うことができます。きちんと筋道を立てて物事を考える力は、国語に限らず、他の教科でも大いに役に立ちますよ。

「読書紹介カード」を作ってみよう!

また、「本を読むのは好きだけど、読書感想文は苦手」という人も多いと思います。そこでおすすめしたいのが、笹倉先生が図書館司書の授業で実施されている「読書紹介カード」です。文章を書くのが苦手な人は、まずは印象に残ったシーンなどを書き出してみましょう。
書きたいことが複数出てきたら、次は、どの順番で書けば相手にうまく伝わるかなど工夫してみましょう。絵を一緒に描けば、短い文章でもその本の良さを効果的に伝えることができますね。読書の習慣をつけるだけでも文章力はアップしますが、短くてもいいので、思ったことを整理して文章にする力をつけて下さい。

笹倉剛(ささくら・つよし)
 
1950年兵庫県生まれ。黒田庄町立黒田庄中学校勤務の後、兵庫県立図書館主任調査専門員などを経て、現在は神戸親和女子大学文学部総合文化学科教授。子どもの本に関する研修会「北はりま子どもの本の学校」主宰、絵本に関する研修会「絵本セラピーの旅(研修会)」主宰などを務める。


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